漢方の美肌づくり|通脈・通竅・通腑の「三通法」
こんにちは😊
茨城県坂東市の漢方相談スガヌマ薬局、漢方薬剤師の菅沼真一郎です。
今回は、漢方の美肌をテーマにした勉強会で学んだ「通脈(つうみゃく)・通竅(つうきょう)・通腑(つうふ)」という3つの視点をご紹介します。
結論からお伝えすると、美しい肌を保つためには、化粧品で表面を整えるだけでなく、血液やリンパの巡り、皮膚のバリア機能、腸と排便の状態を一緒に見ていくことが大切です🌿
今回のポイント
① 通脈:血液やリンパの巡りを意識する
② 通竅:毛穴を無理に開くのではなく、皮膚バリアを守る
③ 通腑:腸の動きと無理のない排便習慣を整える
中医学が考える「理想的な肌」とは
今回の講義では、理想的な肌の条件として、次の要素が挙げられました。
- 潤いとつやがある
- 触れるとなめらかである
- ハリと弾力がある
- 自然で健康的な血色がある
中医学では、皮膚の状態を肌だけの問題として見るのではなく、「気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)」の状態や、五臓六腑との関わりも含めて考えます。
「気」は体の働きを支える力、「血」は皮膚へ栄養を届けるもの、「津液」は体を潤す水分の総称です。これは現代医学の成分名と一対一で対応するものではなく、体全体の状態を捉えるための中医学独自の考え方です。
そのため、同じ乾燥やくすみが気になる場合でも、生活習慣、冷え、睡眠、食欲、便通などを確認し、一人ひとりに合わせて整えていきます。これが中医学におけるオーダーメイドの美肌づくりです。
① 通脈|血液とリンパの巡りを意識する

「通脈」とは、中医学で血の巡りを滞らせないように整える考え方です。
皮膚のすぐ下には細かな血管があり、酸素や栄養を届けています。また、組織にしみ出た水分や大きな分子の一部はリンパ管に回収され、最終的に血流へ戻ります。
睡眠不足、運動不足、冷え、強いストレスなどが続くと、顔色が冴えない、むくみやすいと感じることがあります。ただし、シミ・くすみ・むくみの原因は一つではありません。紫外線、炎症、ホルモン、薬、病気などが関係する場合もあります。
やさしいフェイスマッサージは役立つ?
2018年に発表された小規模研究では、フェイスローラーによる5分間のマッサージ後に、頬の皮膚血流が一時的に増加したと報告されています。ただし、これは美肌効果や病気の改善を証明した研究ではありません。
マッサージを行う場合は、クリームやオイルで摩擦を減らし、痛みや赤みが出ない強さで短時間にしましょう。ニキビが強く炎症を起こしている時、ジュクジュクしている時、熱感やヒリヒリ感がある時は、マッサージを控えてください。
② 通竅|毛穴よりも「皮膚バリア」を守る

「竅(きょう)」は出口や開口部という意味です。講義では、毛穴や汗の出口を清潔に保ち、皮脂や汗が自然に分泌される環境を整えることが「通竅」と説明されました。
ただし、皮膚は肺のように呼吸する器官ではありません。「毛穴を開いて皮膚呼吸をさせる」という意味ではなく、毛穴をこすって無理に開くことでもありません。本記事では、毛包や汗の出口に負担をかけず、皮膚バリアを守ることとして捉えます。
皮膚表面には多様な常在微生物が存在し、皮膚バリアや免疫と関わっています。大切なのは、すべての菌をなくすことではなく、洗いすぎや強い消毒、摩擦を避け、角層・皮脂・水分のバランスを保つことです。
ニキビについて、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」は、1日2回の洗顔を選択肢として推奨しています。一方、1日4回の洗顔では脱落例があった研究も紹介されており、洗えば洗うほどよいわけではありません。また、スクラブ洗顔の有効性は確立していません。
毎日のスキンケアの基本🫧
- 熱すぎない湯を使い、こすらずに洗う
- 洗った後は低刺激の保湿剤で補う
- 紫外線対策を続ける
- 新しい化粧品は少量から試す
- 赤みや刺激が増したら使用を中止する
③ 通腑|腸と排便習慣を整える

「通腑」は、腸の働きを整え、便を無理なく排出できる状態を目指す考え方です。
近年の研究では、腸内の通過時間と腸内細菌の構成・代謝は相互に関係することが示されています。ただし、「便秘の毒が回って必ず肌荒れになる」と単純に言い切ることはできません。食事、薬、睡眠、ストレス、ホルモンなど、腸と肌には多くの要因が関わります。
また、排便は1日3回でなければならないわけではありません。国際的なRome IV基準では、機能性便秘を考える項目の一つに「自発排便が週3回未満」がありますが、回数だけでなく、硬い便、強いいきみ、残便感などを合わせて判断します。
まずは、食物繊維を含む食事、十分な水分、無理のない運動、朝食後にトイレへ行く習慣など、続けやすいところから整えましょう。便秘薬や漢方薬は、体質、持病、服用薬、便の状態によって選び方が変わります。自己判断で長く続けず、医師または薬剤師へご相談ください。
講義で紹介された美容素材について
講義では、沙棘(サージ)由来のオイル、真珠由来成分、植物エキス、漢方処方なども紹介されました。
これらは化粧品や中医学の分野で用いられることがありますが、どなたにも同じ効果が得られるわけではありません。特に、炎症が強い肌やアレルギーを起こしやすい方は、天然成分でも刺激やかぶれが起こる可能性があります。
また、ニキビ、アトピー性皮膚炎、感染症などは、化粧品だけで治療するものではありません。医療機関での診断と治療を大切にしながら、必要に応じて漢方やスキンケアを補助的に組み合わせます。
今日から始めたい「美肌の三通習慣」
- 巡り:同じ姿勢を避け、入浴や軽い運動で体を動かす
- 肌:洗いすぎず、洗顔後は早めに保湿する
- 腸:便の回数だけでなく、硬さ・いきみ・残便感も確認する
- 生活:睡眠、食事、紫外線対策を無理なく続ける
- 記録:肌と便通の変化を2〜4週間単位で振り返る
美肌づくりは、一つの成分を足せば完成するものではありません。肌の外側を守りながら、体の内側の巡りや腸の状態も整える。この積み重ねが、年齢に合った自然なつやと健やかさにつながります✨
皮膚科を受診した方がよいサイン
- 赤み、腫れ、痛み、熱感が強い
- ジュクジュクする、膿が出る、急に広がる
- かゆみで眠れない
- 目の周囲や唇に強い症状がある
- 市販薬やスキンケアを続けても改善しない
このような場合は、セルフケアだけで様子を見ず、早めに皮膚科を受診してください。
肌のお悩みはご相談ください🌿
漢方相談スガヌマ薬局では、肌の状態だけでなく、冷え、睡眠、食欲、便通、服用中のお薬なども確認しながら、一人ひとりに合った養生と漢方をご提案しています。
相談料は無料です。繰り返す乾燥、赤み、かゆみ、ニキビなどでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は、勉強会の内容を一般向けに再構成し、中医学の考え方と現代医学の知見を区別して紹介したものです。個別の診断・治療を目的とするものではありません。
参考文献・出典
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」日本皮膚科学会雑誌133巻3号、2023年3月20日。
- Miyaji A, Sugimori K, Hayashi N. “Short- and long-term effects of using a facial massage roller on facial skin blood flow and vascular reactivity.” Complementary Therapies in Medicine. 2018;41:271-276. doi:10.1016/j.ctim.2018.09.009.
- Lee HJ, Kim M. “Skin Barrier Function and the Microbiome.” International Journal of Molecular Sciences. 2022年10月28日;23(21):13071.
- Procházková N, et al. “Advancing human gut microbiota research by considering gut transit time.” Gut. 2023;72(1):180-191. オンライン公開2022年9月28日。
- Rome Foundation「Rome IV Criteria:Functional Constipation」(2026年8月5日閲覧)。





